インドの結婚式シーズンには馬のGlanders (馬鼻疽) に注意!?

一般の人にとっては、Glanders (馬鼻疽) というのは聞き慣れないと思うが、馬を持つ私にとっては疝痛同様に非常に気がかりな馬の感染症である。PETAのサイトを見ていた所、結婚式で馬を使わない誓約を行う呼びかけの中で、このGlandersについても触れられていた。今回は、結婚式と馬のGlandersの関係についてシェアしたい






① 馬の感染症Glanders(馬鼻)とは?

Glanders (馬鼻疽 *「ばびそ」と読む) は、鼻疽菌 (Burkholderia mallei) による感染症のことで、人獣共通感染症しかし、主にはウマ科動物の伝染病で、ウマやロバに多く見られる。日本ではどうやら発症事例がないようであるが、一応厚生労働省に説明がある↓
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-27.html

厚生労働省の説明を抜粋すると、『主な感染経路は、ウマの分泌物の吸入あるいはそれらとの接触感染である。潜伏期間は通常1~14日であるが、まれに年余にわたることもある。初発症状は発熱、頭痛などであるが、重篤な敗血症性ショックを生じやすい。特徴的な局所症状はほとんどないが、皮膚に潰瘍を形成することもある。また、肺炎(急性壊死性肺炎)や肺膿瘍を発症する例もある。慢性感染の場合は、皮下、筋肉、腹部臓器などに膿瘍を形成する。』とのこと。

インドではどうかと言うと、疝痛同様に気がかりな伝染病である。毎年のポロシーズンで公式試合に出場し馬を移動させる場合、Glanders検査を行い、陰性である証明を提出する必要がある。上述の説明では、『特徴的な局所症状はほとんどないが、皮膚に潰瘍を形成することもある。』とあるが、鼻からの分泌や皮膚潰瘍ですぐ分かる

どんな症状が出るかはこのサイトの写真をご参照↓
※グロいので、見る勇気のある方だけ。

② インドの結婚式の伝統・儀式

さて、インドでの結婚式シーズンは年に2回あり、1回目は日本と一緒で6月前後、2回目は冬の11月~2月頃となっている。従い、この時期になると結婚式会場の前や街中で真っ白な馬達がきらびやかに装飾されて待っている姿を見かける。これはいわゆるHorse Carriage (馬車) で、ヒンドゥー教では新郎が白い馬乗って登場するのが伝統・儀式である。

しかし、この結婚式での馬車問題は、もう何十年にも亘り疑問視されている。理由は主に、①長時間に亘り爆音の中で行われる結婚式儀式の中でずっと待たされること、②馬をコントロールするために”スパイクビット”と呼ばれる馬に苦痛を与えるハミが使われること (これは既に違法) だ。結婚式での馬車の利用は、”Animal Abuse“だとして、多くの動物愛護・保護団体が問題提起してきている。

ハミなしのビットレス騎乗については、ここの記事に書いているため、参照してもらいたい。

③ 結婚式とGlandersの関係

ここまでの話で、結婚式とGlandersは何が関係があるの!? と疑問に思ったであろう。一番最初に、Glandersは人獣共通感染症だということを言及した。これは、『人にも感染する』ということだ。実際に、そういった症例が年間10~20件ほど出ている。馬自体のGlandersの感染自体も年に20件以上は報告があるが、これはきちんと管理されている軍や競馬場等からの報告のみであろう。実際にはもっと多いはずだ。そして、1頭が感染すれば他へどんどん感染するリスクが高まる。

これらの結婚式で使われている馬のオーナーをご存知であろうか?このPETAのビデオが分かり易いが、これらの馬のオーナーは、インドでは低所得層の方々。全ての馬車オーナーが馬を商用物として酷い扱いをしている訳ではないが、これが実情だ。

これらの方々がGlandersに知識があるだろうか、Glandersになっても治療する費用があるであろうか。更に、結婚式に来ている馬への知識がない方々がGlandersに感染しているかどうかが分かるだろうか…ということを考えてみてもらいたい。人への感染が年に10~15件であれば、インドで交通事故に遭うよりもっと低い確率かもしれないが、リスクはゼロではない。

最後に…

結婚式のお祝いで使われる馬をどこから借りているか知っている人達は少ないであろう。それらの馬は苦痛を与えるハミで制御され、Lameness (脚の不自由) もあり、更にはGlandersを持っているかもしれない。嬉しいはずの結婚式が悪夢に変わるかもしれない。もちろん、馬を取り上げたらこの低所得の方々はどうやって生活していくの!? という疑問もある。

どうしても伝統や儀式に従い結婚式で馬を使いたいようであれば、馬達のオーナーがどんな環境で管理しているのか事前訪問でチェックして、馬を必要とする儀式の部分は短時間で終わらせてすぐ馬を返す、苦痛を与えるハミを使っていない、病気やLamenessがないことを確認して欲しいと思う。

最後まで読んで頂き有難うございました🙏



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