インドの個人所得税 vol.1『給与明細と課税所得 – HRA(住宅手当)編』

駐在員は手取り額が保証されているため、これまで個人所得税については無頓着だった。
毎年のインドでの平均昇給率は10%前後という環境下、私自身はローカル同様の大きな昇給制度は適用されていなかったものの、2年目に手取り額が下がるという現象が起こった。これは、全体的な課税所得が上がったことによるものだが、主な原因は、給与明細の中にあるHRA (House Rent Allowance) という住宅手当に関連するものだった。

勿論、手取りが下がったのは私の無知が原因だが、今回は課税対象となるHRAの視点から、個人所得税の話をしたい。






① インドの個人所得税の基本

インドの個人所得税は、まず居住者区分 (居住者か非居住者) でどこまでの所得が課税対象となるかが決まり、居住者の中でも、Ordinarily Resident (通常の居住者)Non-Ordinarily Resident (非通常の居住者) と分けれらる。通常の居住者の場合には全世界所得が課税判定の対象となる。従い、居住者区分に従って所得の課税対象範囲が決まり、個人所得税率が課される

個人所得税の詳細はこのコンサルサイトで網羅されている
https://nk-india.com/india-personal-income-tax/

② インドでの基本的な給与明細

個人所得税を軽減するためには、非課税所得を増やすこと、免税となる投資を行うこと、雇用主からの現金以外での手当(社有車等)を減らすこと等が重要である。これらは、会社の福利厚生や会社の給与明細によるものと、個人の選択や努力によるものがある。会社の給与明細によるものとは、給与明細に非課税所得に出来る給与項目が入っているか否かということが鍵になる。これが入っていないと、個人努力が叶わない可能性もある。

今回のトピックで取り上げるHRA (住宅手当) は、会社の給与明細に入っていれば、一定程度は非課税所得となり、税額控除を受けられる

従い、まずはインドの外国人のビザ取得基準給与額 (USD 25,000/年 = 約INR 2,000,000) を前提に、インドでの一般的な給与明細を共有しておきたい。ここで取り上げるのはあくまでもベーシックな給与明細で、企業によっては個人所得税を軽減できる従業員にメリットのある給与明細になっている会社も沢山ある。

インドでのベーシックな給与明細の例:

※私のエクセルのせいで数字がLakh (ラック) 表記になっているのはご了承頂きたい。

③ HRA (住宅手当) の課税ルール

HRAとは

HRAは、House Rent Allowanceという住宅手当のことを指す。前述②の給与明細のように、これが会社の給与明細に含まれていて、かつ自己負担でアパート等の家賃を支払っていれば、賃料を一部非課税所得にすることが出来る。しかし、控除には以下の条件がある。

  • 賃料がINR 100,000以上の場合、オーナーとの賃貸契約があり、かつオーナーのPAN(納税者番号)を記載した領収書を毎年年度末の確定申告時に提出する必要がある。
  • 上記提出できる場合、以下の3つの項目のうち、最も低い金額が個人所得税から控除可能。
    ① HRA金額
    ② 実際に払った家賃から基本給10%分を引いた金額
    ③ 基本給の50%(ムンバイ、デリー、チェンナイ)又は40%(その他メトロシティ以外)の金額

従い、前述②の給与明細の前提で、家賃INR 40,000/月 (年間INR 480,000) の所に住んでいる場合のHRAの非課税額を計算すると、年間INR 360,000となる。計算は以下の通り。

前提条件
計算式

会社が家賃を払っている場合には、「年間Basic Salary×15%」又は「年間家賃支払総額」の何れか少ない金額が課税対象となる。

私の誤算

では、私が何を間違えたのかと言うと、前述のHRAの非課税部分の知識が無く、『家賃が安いところに引っ越せばその分実入りも多くなる!』と単純に思っていた愚か者であるため。

家賃を半額にしてINR 20,000/月 (年間 INR 240,000) の前提で計算してみると、HRAの税額控除は以下のようになる。

前提条件
計算式

上記の通り、HRAの税額控除される金額は、INR 390,000からINR 150,000に減少し、これは課税所得の増加を示し、単純計算すると以下の通り手取り額が減ることになる。

インド2年目に私の手取りが少なくなったのは全てがHRAのせいではないが、よかれと思い家賃半分の所に引っ越したが故に課税所得が上がった。結果的には手取りが少なくなっても、家賃を低くしたことで全体的にはメリットがあったものの、HRAの課税ルールのせいで、実際には家賃の半額分を丸っと節約できた訳ではなかったというオチだ。

最後に…

インドでは現地採用の方の確定申告を会社負担でフォローしてくれる所が多いと思うが、会社に任せきりにせず、公認会計士を雇って個人所得税について理解してみるのが良い。

※本件は個人の経験に基づくもので、詳細は公認会計士にご確認ください。

最後まで読んで頂き有難うございました🙏





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