業界のタブー!? 馬に乗るのは動物虐待なのかについて考えてみた

かなり昔の前の話だが、まだ自分のインスタをプライベート設定にしていなかった時、見ず知らずの外国人からフォローされ、乗馬していることに対して動物虐待ではないかと言われたことがある。今回は、現役ポロ選手としての観点で、馬に乗ることは動物虐待なのかについて考えてみた。






*あくまでの個人の私見とご理解頂きたい。

ウマの起源と虐待の定義

馬に乗ることが虐待だと言われてしまうことについては否定しない。そもそも馬は人を乗せるために産まれてきた訳ではない。しかし、ウマは長い歴史を経て食用から家畜化され、乗用・軍用化された。前回の一時帰国の際に、『「馬」が動かした日本史』という本を買って飛行機の中で読んだが、馬の存在が文明開化させたことは否定できない。

乗馬が虐待だと言われるのは、馬の意思とは別に人間の勝手な都合で人間の「物」や「道具」のように扱っていることが理由かもしれない。しかし、上述の通り馬は家畜化されて乗用化されてきた歴史がある。また、現在「野生」のままで残っている馬たちは世界でどれだけいるだろうか。馬が本来の姿でいないこと自体が虐待なのかもしれないが、野生として残すことも現実味はないかもしれない。

私がポロをする理由

ポロは人馬にとって危険なスポーツ。競馬のように馬が試合中に脚を痛めることもあり、ポロ選手も毎年誰かが怪我をする。そんな危険と隣り合わせのスポーツで、何のために馬に乗るのか?ポロをするのか?と自分でもたまに疑問に思うことだってある。

ポロは『馬上での格闘技のようなもの』と、これまでの記事の中でも書いたことがあるが、そういった激しい一面もある一方、ポロはチーム競技であり、精密さと正確さが求められるスポーツでもある。最高時速が50~60kmにもなる馬の上で握りこぶし大のボールを打って、端から端まで300mほどあるフィールドの中でゴールを決めないといけない。レベルの高い試合になると、1ミリのズレとコンマ1秒の違いで試合の命運を分ける。従い、馬は道具ではなく、大事なチームメイト。我々選手の技術もしかり、彼らのスピードと強さとクイックさがないとこのスポーツは成立しない。

ポロは、“The King of Games” とも言われている。 カシミール北部のスカルドゥ (パキスタン) のポロ場の隣にある石碑には、“Let other people play at other things. The King of Games is still the Game of Kings. (他のことは他の者にやらせておけ。ポロは王者のゲームであり、ゲームの王者である)” という言葉が刻まれている。

私が大切にしていること

ここの記事にもポロのスケジュールを書いているが、4月~6月までは完全にポロ馬はオフになる。7月からシーズンに向けたトレーニングを開始するが、1日2回トレーニングで乗ることは余りない。シーズン中は、朝か夕方に10~15分程乗って終わる。ダラダラ30~45分乗ることはない。1週間に1日は必ず休ませ、試合が続く時は1週間に2~3日休むこともある。大きなトーナメントが続いた時には1週間~10日休ませることもある。試合は7分半、この7分半に最大限のパフォーマンスを出せるように日々騎乗する。その他の時間はパドックか厩舎で過ごす。私は、出来るだけ馬が馬らしくいられる時間を大切にしている

また、私は拍車を使ったことがなく、鞭は持っているだけ。馬に対して何かを強要することは、乗り手にとっても気分が良いものではない。何かを強要されている場合にはベストなパフォーマンスも出ない。フィールドに出た時にエンジン全開でやる気満々な感じが伝わってくると、乗り手も嬉しい。そうゆう状態を作れるように日々のトレーニングスケジュールを組んでいる。

最後に…

冒頭にも書いた通り、馬に乗ることが虐待だと言われることは否定しない。ただ自馬を持っている方にはよく分かってもらえると思うが、馬という動物はこんなに大きな身体をしてても、とても繊細な動物。馬を管理することは相当な労力とお金がかかる。そこまでして馬を持ちたいと思うのは、『馬に乗る』以上の馬の魅力があるからである。私が大好きなイギリス人の詩人が書いたポエム、”The Horse”を共有して締めくくりたい。

The Horse

Where in this wide world can man find nobility without pride,
friendship without envy or beauty without vanity?
Here, where grace is laced with muscle, and strength by gentleness confined.
He serves without servility; he has fought without enmity. 
There is nothing so powerful, nothing less violent,
there is nothing so quick, nothing more patient.
England’s past has been borne on his back.
All our history is his industry; we are his heirs; he our inheritance.
– Ronald Duncan

最後まで読んで頂き有難うございました🙏



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