前書き
私が国際大会を目指して真剣に取り組んでいるポロ。『マレット』と呼ばれるスティクを持って馬に乗りながらボールを打つ競技。日本人にとっては余り馴染みがなく、『ラフルローレンのロゴ』というイメージしかないかもしれない。
今回は日本人には余り知られていないポロの世界を現役競技者として紹介したい。
Vol. 1では、『ポロの歴史とインドの現在』という話題を簡潔に取り上げる。
✔ ポロ競技の起源は?
✔ インドでのポロはどうなってる?
✔ ポロに使われる馬ってどんな馬?
※内容は個人の知識と情報に基づくものとご理解ください。
① ポロの歴史
ポロの起源
ポロに似た競技は古くからペルシャ、インド、中国、チベット、その他アジアの国々で広域で行われており、どこが発祥なのかは明確ではない。最も古いポロに似た競技の一つとして、ペルシャ(現在のイラン)では”Chaugan”という競技があり、これは『マレット』を意味する。中国では陳思王曹植の時代に”馬球”(maqiu)が行われていたようだが、充分な証拠がなく明らかになっているのは唐の時代。8世紀頃には日本にも伝わり、『打毬』という名前で競技が行われていたも衰退、その後、徳川吉宗将軍の時代に再興するも、日本では息絶えることになる。
インドのポロの歴史
私がいるインドはどうかと言うと、インドがポロの発祥の地であるという証拠がない訳ではなく、”Pulu”という競技が古くから北東インドのマニプール州にて行われていた。この競技は、 “Sagol Kangjei”(馬上でのホッケー)が起源で、ポロはデリー・スルタン朝の時代から北インドにて時代とともに受け継がれた。
マニプール州の首都はインパール。第二次世界対戦中、当時イギリス軍が支配していたこのマニプールを日本軍が侵攻して多くの犠牲を出した地域。「インパール作戦」と聞けばピンと来るかも!?
その後、東インド会社の時代、Sagol Kangjeiを見たイギリス兵が、1859年にアッサムのシルチャにポロクラブを設立、1862年にコルカタにポロクラブが設立され、これが今でも残っている世界最古のポロクラブとなり、現在の国際的に使用されているルールが制定された。その後、ポロは世界的に広まり、今は世界各地で国際試合が行われている。
② 現在のインドのポロ
インドのポロシーズン
インドにポロクラブが設立された当初、クリケットと同じくらい国民的スポーツのように楽しまれ、インド各地でマハラジャや軍隊の間で沢山の試合が開催されていたが、今ではインド軍でもポロ施設を維持しているのは、デリー、ジャイプール、バンガロールのみだ。IPA(Indian Polo Association)でハンディキャップを登録している競技人口は約350名(2023年8月時点)、ポロ発祥の地としては少ない。
インドでのポロの歴史は北インドで発展してきた通り、今でもインドでのポロは北インド中心で開催されている。北インドでのポロのシーズンは、9月にジャイプールで始まり、デリー、ジョードプル、ムンバイでの開催後、ジャイプールに再度戻り、3月にデリーで終わる。猛暑となる4月から6月までは馬を休養させ、7月からシーズンに向けて再トレーニングが始まる。南インドは、8月にバンガロールの軍施設で試合が行われるのみ。マニプールでは、伝統的な小さなマニプリポニーを使って、今でも国際ポロトーナメントが毎年冬の時期に開催されている。
ポロ選手達は、毎年のシーズンを厩舎、馬、テントを移動させながら回っていく。民族大移動だ。距離を測ってみると、合計3,370km!(日本列島を端から端まで以上、東京⇔大阪間を約7往復する距離だ。)
インドのポロ馬とトレーニング
インドは過去イギリス支配下であったこともあり、競馬が盛んで、インドのポロでは主に引退競走馬(サラブレッド)を使うのが一般的だ。勿論、アルゼンチン等の海外からポロ馬を輸入されるパトロンと呼ばれるポロのチームオーナーも沢山いる。一方で、ポロ発祥の地のマニプールでは現地のポニーを使っている。もともとポロ競技はポニーを使って行われてきたことから、「馬」サイズのポロ馬が今でも『ポロポニー』と呼ばれるのはこれが理由だ。
引退競走馬のAlexa。体の刻印が引退競走馬の目印。
競馬は直線を出来るだけ速く走らせる競技、ポロは速く走るだけではなく、急に止まったり曲がったりという動きがあり、馬のリトレーニングには最低1年~2年の月日がかかる。インドの競馬は時計回りが多いため、左手前が苦手な引退競走馬が多い。
インドでは通常6歳頃迄には競馬を引退させるが、ポロ選手たちが好む小柄な競走馬は早く手に入ることが多い。ポロでは3~4歳程度の引退馬を購入してリトレーニング、5歳くらいから一番いい時期になり、10~18歳の間に選手のレベルに合わせてポロ馬が引退となる (トップ選手から下の選手に馬が降りてくる)。現在も、Indian Openと呼ばれる20ゴール以上のハイゴールトーナメントで20歳のポロ馬が活躍しており、海外の一部のハイゴールトーナメントは馬の年齢情報も見られるが、割と年齢が高い馬が活躍しているようだ。ポロを引退後は、乗馬クラブや学校に引き取られる(怪我している場合等は、動物保護施設という選択肢もある)というのがインドでの引退競走馬の行末だ。
『引退競走馬』のセカンドライフは、日本の競馬・馬術界ではホットな話題。後日、もう少し詳しくインドでの引退競走馬の行末はどうなっているのか書きたいと思う。
雑談 : マハラジャとポロ
インドの歴史の中でマハラジャの間でポロが楽しまれてきたのは言及したが、今でもそれが残っている。特に有名なのはジャイプールの『パチョー』のあだ名で知られている”H.H. Maharaja Sawai Padmanabh Singh of Jaipur”氏。インド観光したことある方々にとっては、ジャイプールパレスと言えば分かるであろう。20代と若いがインドではトッププレイヤーの一人だ。ジャイプールのポロシーズンの際には、ジャイプール観光ついでにポロ見学はどうだろうか?
パチョー氏のフルスイング!
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