前回は、『日本人には余り知られていないポロの世界』のシリーズで、「ポロの歴史とインドの現在」という記事を書いた。今回は、ポロの基本とルールについてお話したい。
前回の記事はこちら
※内容は個人の知識と情報に基づくものとご理解ください。
① ポロのフィールドと試合時間
ポロは、大きな芝生で行う一般的なポロと、砂の馬場で行われるアリーナポロの主に2種類がある。
国によっては、砂浜で行うビーチポロや、雪の上で行うスノーポロもあり、スノーポロは毎年スイスのSt. Moritzで行われる試合が一番有名だ。
大きな芝生で行う一般的なポロは、フットボールコートの9個分ともなる、300 x 160ヤード (274 x 146m) のフィールドで、1チーム4人の4対4で試合が行われるチームスポーツだ。マレットと呼ばれるスティックでボールを打ち (右手のみ使用可)、ゴールに入れれば得点になる。
試合時間は7分半、これをチャッカーと良い、1試合あたり最低4チャッカーある。
「チャッカー」は国際的に使われている言葉だが、ヒンディ語から来ており、ヒンディ語ではグルグル回ることを表す意味だそう!
公式試合だと、1チャッカーあたり最大1頭、2つのチャッカーにフルで同じ馬を出せないため、1人あたり4頭馬が居ないと試合に出れないということになる。ということは、1チーム4人の合計8人、1試合あたりの馬頭数は最低28頭になるが、途中で何かあった時のために各プレイヤーとも予備の馬も持ってくるため、1試合あたり30~40頭の馬が集まる。お金のかかるスポーツだ(涙)。
馬にとってもハードなスポーツのため、レベルの高い試合ではハーフチャッカーで馬を替えて馬を休ませながら試合運営されている。どのチャッカーでどの馬を使うかも試合を左右する重要な戦略の1つとなる。
これだけの馬が必要となると、試合当日はオープントラックや10頭程度入る馬運車がずらりと並び、その光景は圧巻だ。
試合当日の様子
② ポロのハンディキャップ
ポロ選手として試合に参加するためには、所属クラブからポロ協会へ登録を行い、レベルに応じたハンディキャップの資格を受ける必要がある。
4人1組で構成されるチームでの試合は、選手のハンディキャップの合計で決まり、例えば「4ゴール」の試合だと、チーム4人の合計ハンディキャップが+4を超えてはならない。ハンディキャップは-2から+10まであり、毎年ハンディキャップの見直しがポロ協会で行われ、シーズンの途中で変わることもある。プロになるとハンディキャップにより報酬が異なるため重要要素となる。プロのポロ選手は獲得したハンディキャップで世界中のトーナメントに出て報酬を稼ぐため、Winston Churchill氏が残した”A polo handicap is your passport to the world“という言葉はポロ競技者の中では有名だ。ハンディキャップさえあれば世界中のどこでもプレイできる。
馬術は男女平等のスポーツ。ただし、ポロは男女の力の差が出るため、女性専用のハンディキャップがあり、女性のみの国際試合ではこの女性専用のハンディキャップが使われる。女性のポロ選手がSNS等で”Mix 0, Ladies +2″というようなハンディキャップ表記をしているのはそれが理由だ。
③ 選手の道具と服装
マレット
ポロをする上で必需品となるのは、マレットと呼ばれるスティックだ。マレットの全体の長さは51~53インチ (ゴルフバックには収まらない) のものが使用されることが一般的で、インドのサラブレッドの場合には52が丁度良い。
杖の部分は竹で作られるのが一般的だが、木で出来たマレットも稀に見る。マレットの全体的な重量は500~600g前後だが、ヘッドと呼ばれる先の部分の重さは選手によって変わる。子供や女性の場合は力がないため、初心者の場合にはこのヘッド部分の重さが160g~180g程度に抑えると腕にかかる負担が軽くなり、試合が楽になる。ただ、このヘッドの重さはボールの飛距離にも影響するため、パワーヒッターのプロ選手のマレットはかなり重い。マレットのしなりやバランスはボールをコントロールするために重要な要素となり、インドではオーダーメイドで作るのが一般的だ。私はマレットの握る部分も少し小さくして握り易くしてもらっている。
選手の服装
公式試合に出るためには、選手の服装として以下がスタンダードだ。これは危険なスポーツを行う上で体を守るために必需品となる。
- 白ジーンズ
- 安全基準を満たしたヘルメット
- ぶつかっても丈夫な硬い膝丈ブーツ
- 膝を守るニーガード
- 肘を守るエルボガード
- スポーツ用サングラス
その他、選手によってはボールが顔に直接当たらないようにフェイスガードや、ボールが口に当たっても歯が守られるマウスガードもしている。
練習試合で、フィールドの端からのノックインの高いボールが口の上に激突して唇の上に穴が開き、8針縫う怪我をしたことがある笑。
このYou Tubeの中で、インドの女性プレイヤーのVijayashreeさんがポロの服装 (6分40秒~) について説明している。ポロ馬の馬装は障害馬術や馬場馬術等とも違うため、これは後日別途記事にしたい。
④ ポロの簡単なルール解説
ポロはかなりのスピードで試合が進むため、未経験者がポロのルールを覚えるのは難しいかもしれない。大雑把に言うと、『人馬にとって危険な行為』は反則!と思ってもらえれば、ポロの試合で笛が鳴った時に何が反則だったのか分かる。反則によってペナルティショット(30ヤードや60ヤード)や、センターラインからのスタート等が決まり、特にペナルティショットは決められる可能性が高いため、反則は出来るだけ避けたい。
ポロの試合で一番重要な原則は、LOB (Line of the Ball) で、これはボールが飛んで行く方向を指して、選手が安全にボールにアプローチするための定義だ。ポロの試合ではこのLOBを奪い合い、毎度ボールが飛んで行く方向でLOBは変わる。真っ直ぐ打つだけでなく、左へ右へ打ったり、バックショットを打ったりしてLOBを変えてチーム同士でパスし合ってゴールを狙う。また、LOBを奪う方法として、ぶつかってボールを奪うライドオフや、マレットを使って相手が打つのを防ぐフック等がある。
この3枚の写真
でどこがLOBか当てられるかな!?最後まで読んで頂き有難うございました🙏
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